バレエの世界~踊る喜び、見る喜び
マラーホフとの共演
バレエと言えば「白鳥の湖」をイメージする人が多いと思う。ロシアの偉大な作曲家チャイコフスキーが作曲し、100年以上もの間、世界中で上演され続けているクラシックバレエの真髄だ。
音楽は耳で聞く、バレエは目で見ると思っている人が多いかもしれないが、実際は身体全体、心、肌で感じるものだと私は思っている。
バレエは身体表現であり、言葉は使わない。だからより一層、手先、目線など繊細な表現にこだわり、心の内側から観客に何かを伝えたいと思いながら、いつも踊っている。
白鳥の湖から
見てくださる皆様に、明日への元気をお分けすることができれば幸せだ。
私の家族は父がクラリネット奏者、母はピアニストで、二人の妹も芸術に関わっており、子供の頃から音楽と踊りが身の回りに溢れていた。
1993年、15歳で単身ボリショイ・バレエ学校に留学した当時、旧ソ連崩壊とペレストロイカの余波で、食料もなく、その日を生きるのが精いっぱいだった。
しかし劇場だけは華やかで温かく、ものはなくても心は満たされていた。芸術の力を心から感じた日々だった。
その後海外で25年間暮らすことになり、20を超える世界のバレエ団で踊り続けてきた。バレエ、オペラ、音楽など、生活の中に芸術があり、生きる喜びとなっている。
針山愛美&マラーホフ
舞台上での針山愛美
日本ではまだバレエを鑑賞する機会が少なく、現実の生活と劇場を隔てる壁は大きい。
私が10年間在籍していたベルリン国立バレエ団での経験を含め、世界のステージやバレエの世界で起きていることを、皆様に紹介していきたいと思う。
神戸女子学院大学音楽学部客員教授
1993年 ボリショイ・バレエ学校入学、1996年首席で卒業。モスクワ音楽劇場バレエ団に入団。以後、エッセンバレエ団、バレエインターナショナル、クリーブランド・サンノゼバレエ団などで活動。2004年から2014年までウラジーミル・マラーホフが芸術監督を務めるベルリン国立バレエ団で活躍。1996年パリ国際バレエコンクール銀賞ほか受賞歴多数。現在もベルリンを拠点に活動を続けるとともにコンクールの審査員を務めるなど後進の指導にあたる。